Co-Writing Farm Official blog

クリエイター集団Co-Writing Farm(CWF)のオフィシャルブログ。メンバークリエイターの日々の活動などをカジュアルにお伝えします。

自己表現の場としての「DTM(Desk Top Music)」に今改めて注目する

こんにちは、Co-Writing Farmの作曲家、ペンギンスです。

1日中Macに向かって仕事していると、ネットから色々な情報が飛び込んできます。僕は物を書いたり読んだりするのが好きなので文字系メディア(noteなど)も結構読むのですが、とはいえ今やインプットの主流を占めてるのは完全にYouTubeです。4Kドローン映像とかを色々なYouTuberが自由にupしてますよね。誰しも自己表現しながら生きていけたら最高だなと思いますし、たぶん歴史上今ほど人間が自由に創作に迎える幸せな時代はなかったんじゃないかと思います。

いっぽうで、やっぱり自分が作曲家という職業を選び、音楽を日々つくっているという立場上、気になることもあります。それは「ゼロからだれかが自己表現の手段を選ぶとき、今でもそこに”音楽”という選択肢はあるのかな?映像メディアがあまりに素晴らしいから、音楽はその引き立て役のようなものになっていないかな?」ということです。5歳の息子がある日音楽を聴いて「YouTubeが壊れてる(=映像がないのに音楽が聴こえてきておかしい)」と言っており衝撃を受けましたが、今や音楽というのは映像の一部になりつつあるのかもしれません。とはいえ音楽のクリエイターも若い世代からどんどん生まれてきていますし、(自分が音楽かだからそう思うのかもしれませんが)映像よりも敷居が低く、抽象度が高いため色々な感情を自由に表現しやすいといったメリットがあると思っています。

生演奏の録音以外の、ほぼ全ての音楽制作の工程がデジタル化された現在、音楽制作現場の主役はDAW(Digital Audio Workstation)と呼ばれるソフトウェアです。。。というのが常識になっていますが、ふと考えてみるとこの「DAW」という言葉が普及する前に、もっとカジュアルなキーワードがありました。それがDTM(DeskTop Music)」です。90年代を中心とした時期に盛り上がった制作手法で、MIDIと(当時は)ハードウェア音源、そしてシーケンサーと呼ばれるソフトを用いて、PCの中だけで音楽制作が完結するということが魅力でした。

DTMDAWという2つの似て非なる言葉の違いについては、藤本健さんの記事で詳細な説明がされていますので、よければご一読ください)

www.dtmstation.com


自己表現の場としての「DTM(DeskTop Music)」はかつてさかんに盛り上がりましたが、その後SNSや映像メディアの発達により、YouTuber、ドローン、Go Proといった人やテクノロジーに取って代わられ、今では自己表現のファーストステップとしての影が薄くなっているようにも思います。

ただ、上の藤本さんの記事にもありますが、DTMという言葉には2つの意味があります。1つは前述のとおり90年代にMIDI技術とハードウェアシンセをPCでコントロールすることで、一般家庭でもシンセサイザーだけで音楽が作れるようになったこと」をさす言葉。もうひとつはそれから10年以上経過してから、2010年代以降に、DAW内部でソフトシンセ・プラグインだけで完全にプロフェッショナルな音楽制作が完結するようになった時代のDAWという道具を使って音楽をする」行為の総称としてのDTMです。

で、ここからは私見なんですが、おそらくちょっと年齢が上の人ほど、前者のDTMを知っているばかりに後者のDTMについて誤解している人もいるっぽいんですよね。

僕も残念ながら?w、前者のDTMをかじったことのある世代ですが、昔のDTMって今と比べると相当面倒だったんですよね。とにかくあらゆる機材がまだハードだったので、結線する・ソフトウェアに認識させるといった「音を出すまでの準備段階」がハードル高くて、音楽を作り込んでいく前に挫折してしまった経験もあります。そのイメージがある世代だと「DTMって報われない作業・・・」というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。

でも今は「最初の1音が出るまでのハードル」が物凄く低くなっているんですよね。僕のようなMacユーザでいえば言わずもがなの「Apple Garage Band」が無料で、なんならMac OSにデフォルトで付属してきます。これが信じがたいクオリティで、Logic Pro Xユーザの私から見ても「細かなUIが不便だけれど、音質どうこうは何も問題ない」と言えるものです。Windowsユーザの方でもCakewalk(かつてのSONARを受け継ぐ存在)やREAPER、あとは昨今大人気のStudio Oneにもフリー版がありますし、無料で始められるものとなっています。

sakky.tokyo
というわけで、DAWという言葉がずっとフォーカスされてきたデジタル音楽制作シーンですが、ここらで改めてDTMという言葉が、懐古ではなく現在の音楽を言い表す正確な表現として(ビリー・アイリッシュ的なものまで包含する表現として)改めて注目されていると思います。僕も超久々にDTMという単語でググってみたら、色々と新しい情報が飛び込んできて刺激を受けました。海外ではBedroom Productionとか普通にComputer Musicと呼ばれているようですが、この際J-POPの輸出と共に、アニソンをDeskTopで作る、そんな「DTM」のコンセプトが広まってもいいように思います。

みなさんも自己表現の手段として改めて「DTM」の楽しさに触れてみてはいかがでしょうか。

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